英語にまるわるちょっとしたお話しをお伝えしていきます。

目次

2013.3.15 森プロジェクト

「ロシア・ウラジオストクにある植物園に森の大切さを伝える絵を描いて送りませんか?対象は10歳〜14歳まで、子ども達の応募をお待ちしています。」こんな案内が届いた。A41枚の用紙に書かれた”招待状”を手渡してくれたのは、演劇などを通してロシアとの交流が深い方。数年前にも、ロシア人演出家による演劇ワークショップ、ロシア人演出家による宮沢賢治作品の舞台など、参加させてもらいいづれも開眼体験。この方が運んでくれるものは間違いない、という確信と安心があった。

ロシア科学アカデミー極東支部植物園研究所(Botanical Garden-Institute FEB RAS)という長ーーい名の植物園主催の招待状を熟読した。以下、招待文の一部抜粋。

2012年のテーマは「森を見てみよう」森(林)の生活、森で生じるマクロ的(全体的、長期的な)あるいはミクロ的(微小な)生態系プロセスについて、別々に生きる植物と群生する植物について、動物と植物間の相互利益関係(動植物の共存)、なぜ森が重要なのか、なぜ森を大切に守らなければならないのか、これらがテーマです。

何回も読む。音読。少し時間をおいてまた読む。
「ぴっぴぃ!」直感、何かを予感・・・感じたら動く、が私のモットー。森そして自然や環境について考えを深め、ロシアについて学び、芸術に触れるいい機会になると確信、対象年齢の生徒を募り『森プロジェクト』を立ち上げた。

ところが「やる。」と決めたものの、季節は冬の真っただ中。木々の葉は落ち、冬枯れの季節。もうすぐ初雪が降ろうという頃だ。締め切りが3月1日だから、冬の間に森を感じ、作品を仕上げなければならいない。さて!

まずは、ロシア在住10年の音楽家の知人に相談、数回のワークショップを企画した。第1回目は、その知人によるレクチャー。ロシアの森について、ロシア人の自然との関わり方、ロシアの子ども達の芸術教育についてなど。写真を見ながら、その土地に住んでいた人ならではの見解を聞くにつれ、知るにつれため息・・・日本の45倍の国土を持つロシア、ロシアには第2学校という芸術学校が確立され、子ども達にとって絵を描くこと、表現することは、日常のなかにあること、などを知り、剣もほろろ・・・の気持ちになる。

それはそうとして、では日本人らしさって何?自分らしさって何?というところに着目し、参加者9名の小中学生たちは頭を捻らせた。そして、1人1冊渡されたMyスケッチブックに自分がイメージする森を描いてみた。とは言っても外は冬。森を実感としてイメージしにくい。加えて、”思いのままに描く”ということに慣れない子ども達は、なかなか色鉛筆が動かない。確かに、小学校も中学校も図工、美術の時間は、構図の題材も決められたものを決められたように描く。”自由に描く”ということに慣れていない。

それでも何とかスケッチブックに描いていたが、奥行きがない。テーマである「森を見てみよう」の結果として描かれた絵ではない。観察しなければ、森を自然を。

悩んだ私は、日本ウラジオストク協会の方に相談した。この方はロシアとの交流が深く、ロシア語が堪能、今回私たちが受け取ったの環境植物会議へ絵で参加するという案内を和訳したのも、田代さんご自身。その都度、ロシア事情なるものを教えてもらい私は目からウロコ。生徒達にもシェアをしながら、その都度学びの時。そして、田代さんからの返信メールに再び、三度立ち止まる。   


今回は「絵画的芸術作品」ではなく、「平面に表現されるデッサンや視点」を重視したいのだと思います。だからといって「写生」ではありません。「森を観察して、見たこと、感じたこと、思ったことを表現する」あるいは「表出する」というのは、とてもロシア的な表現方法で、演劇やフィギアスケートでも言えることですが、ロシアの芸術的センス1つの要素とも言えます。日本の教育現場では高度とされているかもしれませんが、ロシアの小中学校(あるいは幼稚園)では、ソ連時代から音楽や芸術などのあり方の根本にこのような考え方があります。

〈日本ウラジオストク協会 田代氏のeメールメッセージより抜粋〉


素人ながら、バレエ、絵画、文学・・・ロシアの芸術性、文化の高さには敬意をはらっていた。ロシアの芸術性の高さの秘密は、子どもの頃からの教育にあるのか・・・と疑問が1つ解けた思いになった。

ロシアに送る作品の提出期限も迫っている。さてここからどうする。
『冬の森キャンプ』を企画、導かれるように葛巻町にある『森と風のがっこう』に1泊2日のエコキャンプに出かけた。時は2月中旬、厳冬の森へ・・・私たちは防寒具をいっぱい詰め込んで鈍行列車に乗り込んだ。

列車とバスを乗り継いで『森と風のがっこう』に到着。ここは廃校になった学校を再利用して2001年に開校したエコスクール。山の奥の小さな集落にある自然エネルギーを取り入れた循環型の生活スタイルを体験を通して楽しみながら学ぶところ。到着すると、子ども達は大はしゃぎ。雪と戯れる、雪をかき分けて森を歩く、冬の川で氷渡り、夜空の犬散歩、火を熾す・・・正に自然体感の時間。生きて、生かされていることを感じる連続。「寒い」とか「いやだーー」と言った子どもはいなかった。むしろ彼らの中の”生”が活き活きと動いているよう。同行した大人3名も、子ども達の保護者のつもりが、私たち自身が心身ともに洗わたよう、感性が研ぎすまされた気がする。

そして、作品作りに戻った。森体感後も、スイスイ絵が描けた・・・というわけではなく、やはり画用紙を前に悩む。それでも何とか作品を仕上げ、「これでいいのかなーー?」首を傾げながら、ロシアに送った。

今回の取り組みを通して、表出する難しさをつくづく感じた。
「日本の子ども達はしあわせだから、表現すること、伝えることが下手のなのよね。」と講師を務めてくれたNさん。なるほど〜〜 わかる気がする。表現するというのは、心の内から突き動かされるような感情や表出せずにはいられない内側の葛藤や焦燥などによって生み出されるのではないか。ぬくぬくとな〜んとなく生きていては感性が動かない気がする。

それでも「表出すること、表現すること、伝えることって難しい。」そのことに子ども達自身が気づいたのは大きな成果だったのではないか。子ども達が置かれている今の日本社会において、欠けていることに気づかされた。自然に触れること、表現すること、自分の意志を持つこと、人に伝えること・・・私はこれからも自分の仕事を通して、子ども達と一緒に考え、経験の機会を与えていこうと思う。

このプロジェクトを立ち上げてから、私は森についての本を買い込み少しお勉強。どこを歩いていても、森や木が気になって仕方がない。このプロジェクトは終わったけれど、森の大切さを考えている。きっと子ども達もそう。一冬の忘れられないプロジェクトだった。

ページトップに戻る

 

体験レッスンのお申込みはこちら

体験レッスンのお申込みはこちら