時は1800年代中頃、ある寒いクリスマスイブ。ロンドンの街角。♪God rest you merry gentlemen, let nothing you dismay~~♪ドアの外で健気にクリスマスキャロルを歌う少年を心無く追い払ったのは、スクルージ。小説『A Christmas Carol』のなかのワンシーン。クリスマスキャロルは、本来イエスキリストの誕生を祝い、誕生にまつわる様々な場面や逸話を歌にしたもの、『Joy the world(もろびとこぞりて)』や『Silent Night Holly Night(きよしこの夜)』も、クリスマスキャロル。欧米では、クリスマスイブに慈善金を求め子どもたちがクリスマスキャロルを歌う慣習があるようだ。今日も、世界中の街角でクリスマスキャロルの歌声が街を満たしているだろう。
さて、話しを小説『クリスマスキャロル』に戻して。スクルージは、偏屈者。人のためには一銭も出さない(He never gave a penny away)ケチで冷酷な人間、彼の周りの人をも不愉快にする。そんな心を閉ざしていた彼が、不思議な体験を通して改心していく。人間愛に目覚め、クリスマスに大きな意味を見い出し、自ら実践していく物語。クリスマスイブの夜、家に帰ったスクルージは、一人経済新聞を読みながら夕食を食べる。すると、彼の前に3人の精霊が次々現れる。「過去のクリスマスの精霊」は、孤独で淋しかった少年時代を映し出す。あぁーー淋しかったんだ・・・と気づくスクルージ。見ないようにしていたことに向き合うことになる。続いて現れたのが、「現在のクリスマス」の精霊。貧しいなか、明るく愛に満ちたクラチット家族の情景を示し、スクルージは、末子ティムが病気がちで長くは生きられないことを知らされる。そして、三つ目の精霊「未来のクリスマス」は草が生い茂った荒れ果てた墓地にスクルージの名が刻まれた墓石を見せる。それと共に、まだ変えることのできる可能性があることを示してくれる。読み進めるうちに、なぜスクルージが人を愛することができなくなっていったかがわかる気がしてくる。そして、“どこにでもいるよね、こういう偏屈者“と思っていたスクルージの心の弱さや醜さが自分の中にも住んでいるのではないか・・・とはっとした。淋しかったこと、辛かったことをちょっぴり思い出してみたり、だからこそ嬉しかったな~って、温かな気持ちになったり・・・。
1843年12月に初めて出版された『A Christmas Carol』は、この時代にイギリス国内はもとより世界の様々な国の人々に愛され、その後も多くの人々に読まれることになる。作者のCharles Dickensは、裕福な家庭に育ったわけではなくどちらかと言えば労働者階級の生い立ちを持つ。幼い頃、父親が投獄され働くことを強いられた12歳の少年Charlesは、クリスマスキャロルを自分の少年時代と重ね合わせていたのではないか。彼の名を世に出したこの作品『A Christmas Carol』を持ちイギリス国内はもとよりで、アメリカでも朗読会を開き、“貧しい者に豊かさを分ける”ことを使命とし、生涯啓蒙活動を続けた。“豊かな者が貧しいものを助ける社会”それがスクルージが精霊との関わりを通して辿りついた境地であり、ディキンズ自身が自らの活動を通して社会に示してきた思想のように思えてならない。
この小説のプロローグに登場したクリスマスキャロル・『God Rest Ye Merry, Gentlemen(世の人忘るな)』の6番の歌詞から、クリスマスの意味が感じられるでしょうか・・・。 Now to the Lord sing prises, All you within this place, And with true love and brotherhood Each other now embrace, This holy tide of Christmas All others doth deface. O tidings・・・・・
クリスマス。色々な国の子どもたち、厳しい状況下にいる子どもたちはどんな気持ちでクリスマスを迎えるのだろう。戦争の中にいる子、貧困の中にいる子、住む場所を奪われた子、親と一緒に暮らせない子、病気の子・・・選ぶことのできないそれぞれの環境で、愛されない子がいませんように・・・しあわせを祈ります。“Love and Share”これが、私が『A Christmas Carol』から教わったこと、私が学んできたクリスマススピリット。
Merry Christmas to you all.
英語さんぽ道