わが町には、茅葺屋根の民家10棟などを移築復元したおよそ7ヘクタールの大きな野外博物館があります。
数日前、海外からの友人達を案内するために、前日に下調べ行きました。まずは案内所に立ち寄り、ガイドツアーもあることなどを聞いた後、敷地内を一回り、英語でなんと説明するかな・・・と自分なりにシミュレーションしてみました。まずは、入り口からほど近いところにある竪穴式住居、平安時代に造られたものとの説明書き。平安時代は何年頃だったかな・・・iphoneで確認。794-1185年、とわかり、説明に加えられることに喜びました。それにしても、当時のなんてシンプルな暮らしなのでしょう。まるでキャンプ生活のよう。
点在する家々の茅葺き屋根があまりに見事なので、思わず足を止めて見上げる事しばしば。
ところで、茅葺きは英語で・・・ thatch・・・something!と頭に浮かび、続いて口をついて出てきたのは、
I will live in a small thatched hut in a field in the shade of some pine trees.(”Gorsh the cellist”より 文: 松香洋子 発行:株式会社 mpi 松香フォニックス)
この文は英訳された宮澤賢治『雨ニモマケズ』の一節、”野原ノ松ノ林ノ陰ノ小さな萱ブキの小屋二イテ”の部分です。
中学生達と、毎年諳んじるこのI’ll not give in to the rain.の英文が、茅葺の屋根を見上げてからスラスラと口から出てくるではありませんか!覚えていた・・・私自身は、特に「暗記」したわけではないけれど、中学生と何度も何度も誦じているうちに覚えていたようです。
実際に茅葺の屋根を目の前にして発した”thatched”という単語は、これですっかり自分の語彙になり、こうして実物と実感を伴って覚えた語彙や表現は、定着するのです。子ども達にとって。レッツトーク!で英語の学ぶために使っている絵本や本の内容や表現が、何年も経ってからこのように役に立ったり、実生活とつながる日が来ることを思うと嬉しくなります。声に出して暗唱するほど口にした英語は、こうして自分の中で熟成され身についていくことを身をもって知ったひと時でした。
翌日、友人2人を連れてここを歩いた私たちは、やはり茅葺き屋根の家々についての話になり、100年以上も前のこの家々がこんなにきれいに残されていることに共に感動したのでした。こんな話ができたのも、英語で宮澤賢治の詩を読み、覚えていたから。今学んでいる英語が生かされるのは、いつか・・・
それは5年後かも、10年後かも、その先かもしれません。各自がどんな道を選び、その道の途中で英語との接触があった時に気づくことではないでしょうか。