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セーラジャーナル

英語さんぽ道

自然への畏敬

       あるとき、私は「自然が足りない。」と気づいた。仕事に忙殺され、草花の芽吹きや、風に匂い、朝日の輝き・・・目の前の自然に気持ちが向いていなかった。そこにあるのに、だ。自然とかけ離れ、前へ前へ進もうとしていた自分、あの頃の私は心も身体もどこかギスギスしていたような気がする。それから、少しづつ道端の花や空の景色に目と心を向けるようになった。日々自然を感じると共に、理解したいとも思っている。

  アイスランド出身、ヨン・ラフン・オッドソンさんの話しを聴く機会があった。日本の大学で学び3年、卒論は“雪崩”について、という彼は自国アイスランドを離れたところから観ているのだろう。特にも私の興味が向いたのは、アイスランドの自然についてだった。

 “氷と火”の国と言われているアイスランドは、北極圏に近いところに位置する。火山噴火が頻繁な島国、しかしながら火山灰は風にのりヨーロッパ各国に流れて行くという。「だから火山灰の影響があるヨーロッパの国の人達はアイスランドが嫌いなんだよ。」と笑って話すヨンさん。大きな氷河がいくつかあり、その地域には寒過ぎて人々は住むことができない。海を囲むように人々が暮らしいている。真夜中まで明るい白夜の夏に対して、冬になると国土のほとんどが雪一面で覆われ、家の2階から出入りするほどの雪が積もる。エネルギーは地熱を利用、そのようなアイスランドの地理的要因を受け入れ人々は暮らしているように、ヨンさんの話しを聴きながら感じた。アイスランドはオーロラが観られるところでもあり、彼がワークショップで、最後に見せてくれたオーロラの写真に参加者誰もが心を捉えられた。「オーロラを観てみたーーい!」「アイスランドに行きたーーい!」

  厳しい自然条件を面白可笑しく、楽しんでさえいるように語る彼は、とてもナチュラルで彼自身が自然の一部のように感じた。そして、私の頭にある英語が浮かんできた。”awe of nature”

  ヨンさんのワークショップから間をおかずして、C.W.ニコル氏のトークライブを聴きに行った。お顔を見れば、「あー」とご存知の方が多いであろうC.W.ニコル氏は、作家、環境保護活動家、探検家。私はこれまで彼の本を読み、その生き方、自然への対し方を尊敬していた。星野道夫氏、倉本聰氏、佐藤初女氏などと通じる自然感があるような気がする。「自然を愛する人に嘘はない。信頼に値する。」というのは私の持論。目の前に現れたニコル氏は、揺るぎない何か大きなオーラをまとった方だった。

  17歳で家を飛び出しカナダへ渡る。「戦争のない大自然のあるところに行きたかった。」と、語っていた彼は、イヌイットと暮し「これがいい。」と、ナチュラリスト、探検家の人生の始まり。その後世界中の海、山、森とそこに生息する動植物を見てきた。母国ウェールズの森が壊されたこと、エチオピアの森が壊されたのを目の当たりにした悔しさが、彼を森へ向かわせた。「日本の森が自分を癒してくれた。」と。そして、「ここに森をつくろう。」と長野県黒姫に居住の地を見つけ、荒れた里山を購入、1986年より『アファンの森』と名付け再生活動を始め、森を育てている。

     トークライブで、C.W.ニコル氏が話していた示唆にとんだメッセージ。「日本は、全ての山に名前がある。日本ほどいい国はない。北に流氷、南に珊瑚、言論の自由があり、宗教の自由がある。」最後に彼が優しく語っていた「自分を自然の一部と考えよう。」相手(自然)の条件を理解しよう。例えばトンボが池のまわりを飛んでいる。どうしたらトンボが生きられるか思いを馳せる、理解する。どこから来てどこに行くのだろう・・・と考える、ずっと考える。そして、「人々と議論しよう。そして、自分が何ができるか考え、小さくていいから自分ができる何かをやっていこう。」と。   

  C.W.ニコル氏の話しを目の前で聴き、再び私の頭に浮かんだaweという言葉。aweは、畏敬、畏怖など大いなるものへの恐れと憧れ、尊敬の念を表す言葉である。恐れと尊敬が交差した感情。

Awe of nature. 自然が教えてくれることがきっとある。もっともっと自然の中へ・・・

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