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セーラジャーナル

英語さんぽ道

日米友好の桜に想う。

さくら前線北上中!

何年か前、小さな一杯飲み屋さんで「さくらを追いかけて南から来ました。」という方にお会いしました。カウンターで一人盃を傾けるその方は、一眼レフのカメラ片手にそれはそれはいいお顔をしていらした。いいな。いつか私もそんな”サクラを追う旅”をしてみたい、と思った。1月の沖縄に始まり5月の北海道で終わる桜前線は、4ヶ月もかけて北へ北へ開花させていく。

私たち日本人は、桜に対して特別な想いがあるのではないか?

そんなことを考えながら今年のさくらの開花を待っていたとき、シカゴに住む親友から桜の木のイラストの切り抜きが送られてきた。ワシントンDCの    を背景に桜並木が連なっているイラストが1枚。2人の子どもが着物を着た家族が、盛装して桜並木を歩いているイラストが一枚。どちらも、日本からワシントンDCに桜の木が贈られてから今年で100年を祝う記念切手の案内だった。

Cherry Blossom Centennial, celebrates the friendship
between Japan and America- a friendship that found
enduring expression when the city of Tokyo gave
3,020 cherry trees to the city of Washington,D.C. 
 


数日後、”日米友好の桜、今年で100年”の記事を新聞に見つけた。東京市からワシントンに桜の苗木が贈られたいきさつや、100周年を祝うセレモニーについて述べられている。桜の花びらが散りばめられている紙面が笑みを誘う。読売新聞(2012/3/30)によると、ワシントンDCに贈られた桜は、ニューヨーク在住の高名な化学者”高峰譲吉博士”の尽力によって届けられた。その桜は、写真家のエリザ・シドモアらの希望により、高峰博士と東京市長・尾崎行雄氏で3,020本の桜の木が植樹されたという。その後苗木はワシントン市によって大切に育てられ、毎年桜の季節には『全米桜祭り』が行われる。


思い浮かぶ光景がある。
ワシントンDCの、この桜並木の前に立ったのは10年以上も前のこと。当時ペンシルバニアの大学で勉強していた私は、バスでワシントンDCに向かった。アメリカの首都、政治の中心に身を置いて、自分の目で見たかったから。試験明けの休み、秋の始まりだった。もちろん桜の花は咲いていなかったけれど、ポトマック河畔に植えられた桜並木の桜が満開の光景を想像し、感慨深くなっていた。桜が咲いていない桜の木はどこか寂し気で。私自身もこの時、咲いていない桜に郷愁にも似たもの哀しさを心の中に見つけ、自分のルーツであるニッポンを想った。日本にホームシック。


 桜の開花を心待ちにし、春は桜が咲いた〜散ったということから話が始まる私たち日本人。
なぜ日本人は、こんなにもサクラをこんなにも愛するのだろうか。

東日本大震災後、日本人に帰化した日本文化研究者・米コロンビア大学名誉教授のドナルドキーン氏はこのように述べている。

もちろん美しいからですが、さくらの花が長続きせず、束の間の美だからです。日本人が愛するのは、さくらの儚さにあると思います。花は散り、形あるものは壊れる。まさに無常である。桜は日本人にとってはただの花ではないのです。春の訪れを告げて、わずか数日の栄光に彩られた後、あっさりと散ってしまう桜こそは、日本においてすべての花を代表する花と言えるでしょう。


また、英国ウェールズ生まれ1995年日本国籍を取得したC・Wニコル氏(作家、環境保護活動家、探検家)は、日本でたくさんの人が集まって花見をする様子は、はじめとても不思議な光景に見えたという。NHKテレビ『歴史は眠らない』の中で、『サクラと日本人』と題して、日本人とサクラの関わり方、意味について語っていた。

以下、テキストからの抜粋。

「花見」は、奈良時代(710から784年)に宮廷の習慣として
中国から伝わったと信じられている。記録に残っている
最初の花見は、嵯峨天皇の時代のことで、『日本後紀』に
記録がある。天皇が行幸して、花樹をご覧になり、文人に
詩を作らせ、花宴をしたのが節の始まりで、その後
定期的に天皇主催の花見が行われたらしい。この頃から
日本人の桜に対する独特の美意識が育まれるようになった
という。

その後、江戸文化と共に桜の木と桜の花を愛でることは、
あらゆる人にとって習慣として確率された。

ヨーロッパに生まれた私にとって興味深いことのもう1つは、
美しい桜のイメージを人生や、もっと端的には人の死と
結び付けるという日本人の美意識だ。面白いのは、
花が散ることを「はかない」と感じる日本人の独特の感性 
である。


なるほど、日本人独特の美意識のなかで育まれてきた桜なのである。


私もサクラを愛でるひとり。
ここ北上市には、全国さくら100選に選ばれているさくらの名勝がある。”展勝地”。樹齢90年を越えるさくらの木、 北上川沿いに約2キロのさくら並木が続く。まさにサクラのトンネル。昨年は東日本大震災の影響により、花見も自粛ムードだったから、今年の桜は尚のこと心待ちにしている。

今年も、桜を追いかける!




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