ヴィクちゃんに初めて会ったのは、彼が高校生の時。交換留学生としてフランスから日本の高校に1年弱の予定でやってきた。最初の3ヶ月を我が家で過ごし、その時のエピソードは数知れず。身長180センチ以上の西洋人が同じ屋根の下にいることになかなか慣れず、家の中で彼に会う度に驚いていたことを思い出す。彼にしてみれば、思春期の終盤にママを逃れようとニッポンに来たものの、ママに似たような人(私のこと)がいてがっかりしたらしい。ははっ、残念でした!極端な偏食、お弁当はメニューA(ヌテラサンドイッチ)とメニューB (白いごはんに焼いた牛肉)の繰り返し。作る私だって飽きる・・・彩りに、とパセリとトマトを添えたら、ヴィクちゃんにひどく叱られた。自分の好きなものがはっきりしていて、それさえあれば満足。至ってシンプルなのだと思う。我が家の後も、近所に住んでいたので時々会ったり、彼のご両親が彼を訪ねて来日した際は我が家に泊まったり、と家族のようになっていった。そんな彼が留学を終えて帰る時は、流石に寂しかったな。じゃあ!とあっさり機内に向かう彼の後ろ姿を見送りながら、涙目になった。
帰国してからは、2年に一度くらい年末年始に「ヴィクちゃんでーーす。」と電話をくれて、中身のあるようなないようなおしゃべりを英語や日本語でしていた。私がフランスに行った時は、2度会ったけれど、特に案内を買って出てくれる訳でもなく実にあっさり。彼のママがその分あちこち連れて行ってくれたり、所有しているアパートやヴァケーションホームに泊めてくれた。ビィクちゃんママとは、道理で気が合うわけだ!
ヴィクちゃんが友達と一緒に来日した時は、最寄り新幹線駅からここまで歩いてやってきた。高校生の頃自転車で通った道だから、覚えていたのね。その時の彼は、留学時代に着ていた高校の制服白シャツを着ていて爆笑。ほんとうにこだわりがあるのかないのかわからない。
帰国後は、コンピューターやアニメの学ぶ学校に通い、その後適職につき、家を買ったと聞いていた。そんな彼が日本に再び行きたい、住みたい、と言っていたのはいつ頃からだっただろうか。どうやら本気で来日を計画し、動いているようだった。
2度目の日本滞在は京都へ、今までの仕事を続けながら暮らすことに決めたらしい。
何度かeメールをやりとり、ビザ申請のために必要だからと「僕が高校留学した時、日本への到着日はいつだったかな?」とか、京都の住む所について聞かれたり、その度に私は調べたり人に聞いたりしながら長々と返信するも、結局は自分で決めていたヴィクちゃん。アパート探しの際に、メールのやり取りでは埒が空かないから、と都市でのアパート探しを数度している姪と共にZoom越しに話をするも、40分のうちほとんどが彼が仕事の話などで終始した。「なんか大丈夫そうね・・・」と姪と頷き合った。ビザの許可がおりるのに、時間がかかるも心配するでも焦るでもなくThis is my adventure. と。トレビア〜ン!
そうして、この夏念願の来日を果たし現在京都で暮らしている。そしてそして!ヴィクちゃんが北上帰省する。こちらでの滞在日は聞いていたものの、何時に到着するのか・・・ヤキモキ待っていると一昨日京都から東京乗り換え、北上着の新幹線の時間を知らせるショートメールが届いた。これは電報??と思われるような用件のみのメッセージが。「駅までお迎えに行こうか?」と聞くと「歩いて行くから大丈夫。」と。懐かしい道を自分で歩きたいんだね、きっと。ヴィクちゃんは明日京都を出発しやって来る。高校留学から13年、故郷に帰省するような気持ちで帰って来るのが嬉しい。