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セーラジャーナル

英語さんぽ道

言葉のニュアンス

中学1年生の英語の単語テストを見て驚いた。
裏表びっしり100問の単語テスト、左側に英単語、次にカタカナで読み方が書いてあり、生徒はその左側に意味を書いていくというもの。 例えばこのよう。
   
 1.   good    グッド
 2.   morning   モーニング 
 33.  hospital  ホスピタル
 100.for          フォー
 
これって、30年前の単語テストと同じ!

  
このテスト1枚だけを見て、中学校英語に批判も意見もするつもりはないけれど・・・、(小さな声で)意義アリ!!1つには、カタカナが発音に書いてあること。このカタカナをそのまま読んで、”hospital=ホスピタル”と言っても、よほど日本語英語に慣れた人じゃないと通じない。言語は”音”で覚えないと。
 
 
そして、単語の意味は1つではないということ。rabbit=うさぎ、school=学校 などの名詞は問題なし。では、for, a, theの意味、正答は何だろう? これらは、文章の中で様々な意味を持ち、動詞や形容詞と一緒になると、新たな意味を生む。私も、この単語テストの解答欄にどう書いたらいいのかわからない。 ”for“や“ the” の回答欄を空欄で提出したこの生徒に大きく同情する。


もう1つ、単語は文章の中で覚えないと使えるようにならないということ。これは私の自論。どういう状況で使うか、そしてその言葉がもつニュアンスがわからないと、ヘンテコな、辞書で調べた単語をつなぎ合わせたような英文が出来上がってしまう。


言葉のニュアンスって、一朝一夕で身につくものではないからタイヘン。そして面白い。例えば、「お腹いっぱい!!」と言いたいとき、”I’m full.”と言うのと、”I’m stuffed!”, “I”ve had enough.”と言うのと、”This is too much.”と言うのでは、相手への伝わり方が違う。 それぞれニュアンスが違う。


英語では、”It’s not what you say but how you say it”と言って、どのように言うかが大切という。アメリカで子供が心ないごめんなさい、を言っていたときママが言い直させていた。 「きちんと目を見て、心をこめて誤りなさい。」と 言葉から伝わるニュアンスって大事。 


そこで思い出したことがある。日本の華道・茶道について、ネイティブの友人と翻訳していた時のこと。彼女は、何度も”nuance”(フランス語が語源の英語)という言葉を発し、「Well・・・this is not it. It sounds like・・・。」と2人で言葉探しをしていった。ピッタリした表現がないと、一旦保留、また戻って”それそれ!”と2人で何時間も日本語と英語にまみれる翻訳作業。彼女は在日15年、華道も茶道も10年以上、語学のプロであり、文化に造詣に深い。その後も、彼女と翻訳コラボを通じて、”語感・ニュアンス”をより意識するようになった。 翻訳、通訳の際、内容をよく理解せず、辞書だけを引いて、言葉をつなぎ合わせるのは、危険なこと。私自身何度も苦い経験をした悔しさが、又次への意欲を掻き立ててくれている。

 

では、言葉のニュアンスはどうやって身につけていくのだろう。 これはもう、言葉の海にどっぷり浸って語感を身につけることかな~と思う。★多量インプット★ その言語が話されている国で暮らすことができる幸運があることを別にして、日本にいて英語の語感を身につけたいものだ。 その手段として、映画や歌、雑誌、本などは生きた英語表現の宝庫。短い表現でも、単語でも状況、使われ方を見て、聞いて”な~るほど~!”という英語を増やしていくこと。良文をたくさん音読して、口に覚えさせる。 理屈でわかるというよりは、感覚的にわかるということ。日々右脳を鍛えている人は、この能力に長けているかもしれない。


外国語も、立派に使うけど何となくぎこちない人と、シンプルな表現使っていても、ナチュラルな感じの人がいるのは事実。ニュアンスを感じ取れる人は、何となく外国語がうまい。 そして、外国語でニュアンスを伝え合える人は母国語がきちんとしている人。”母国語ありき”なのである。


何語に関わらず、本を読み、考え、感じ、書き、人と対話をしたり・・・を重ねていく中で、ニュアンスが感じとれたり、ニュアンスを伝えたりできていくのではないかしら。秋は、言葉を熟成させていくのにピッタリの季節かも・・・。熟成されたワインとチーズをお供に・・・。

 

 


  ※nuance (色、音、調子、意味、感情などのなどの)微妙な差異、陰影    【研究社 新英和中辞典】

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